時を越えて来やがったチケット

ワケあって、大学生の頃の開かずのシステム手帳を開いた。
授業をさぼるための出席カードとか出て来る中、当時の観劇チケットが大量に出て来た。本当に大量。
一枚一枚、確認しながら呆然とする。

はっきり憶えている。
大学1年生の時に「演劇学専攻」に入ってしまったはいいが、
演劇にまるで興味ないし「どうすりゃいいんだ?」と皆目見当がつかない日々を送っていた時、
今は無きシアターアプルで宮藤官九郎さん率いるウーマン・リブの公演『キラークイーン666』を観に行った。
前売りは完売していて、当日券に何時間か並んで買った。決して安くない値段。
生まれて初めて演劇のチケットを自分で買って見に行った芝居だった。
その時のチケットが残っていた。
観劇した帰り道、「おれも、演劇やってみよっかなー」みたいな気分が急にこみあげてきた。
その足で松屋のバイト面接を受けることになっていたけどサボってソワソワしながら近所を歩いた。
翌年、劇団フルタ丸の旗揚げ公演をやることになるのだけど、そのチケットも出て来た。どうなってんだ。

1,000円というチケット価格も何を根拠に決めたのか思い出せない。当時は予算という概念を持っていなかったから、雰囲気で決めたんだろう。
当時のメンバーが手作りした消しゴムはんこが押してある。そのハンコの実物まで出て来た。まだ押せる。
物質は強い。
手に取れる物質でこうやって向き合うと一気に引き戻される。
振り出しに戻ったような気分だ。
やろう。