M-1挑戦を終えて

浅草の雷5656会館で、M-1グランプリの2回戦に挑みました。劇団写真、残念ながら敗退しました。応援して下さった皆様、ありがとうございました。

思えば8月頃、カメラマンのタカハシアキラさんが「M1に挑戦したい」とツイートしていたのを見て、本当に何気なく「いいね」を押したのが全ての始まりでした。単純に頑張ってほしい、そう思ったんです。が、まさか38歳の自分がそこに相方として出場することになるとは思ってもいなかった。

「漫才は聖域」

僕の中で、ずっとそう思っていた。素人が気軽に触れてはならない。大火傷する。そんなふうに思っていた。松竹芸能で芸人さんに授業しながらも、コント、ピン芸、コント漫才は教える言葉を持っていたけど、しゃべくり漫才だけは教える言葉が僕の中になかった。
M1グランプリの大会は全部見ていてエンタメショーとして大好きだし、そこに人生賭けて挑む芸人さんを尊敬しているが故に僕にはできない。そう考えていた。なのに、タカハシさんから「一緒に出ない?」と誘われた時、僕はあまりにもあっけなく返してしまった。

「出ます」

あんなにも頑なだったのに、自分ではない誰かの提案に全力で乗っかていた。何が言いたいかというと、直感的に出るべきだと、言い訳してんじゃねぇ!と思ってしまったから。そんな選択をしてこなかった自分は漫才をやると決めていた。

この2カ月半、漫才のネタ打ちがあったり、漫才稽古があったりしたことが新鮮だった。予選会場の狭い楽屋に溢れ返る芸人さんたちの姿。壁にむかってネタ合わせをしている姿。テレビに出て売れていようが売れていまいが関係ない。同じところにいて、同じように緊張していた。舞台袖、自分達の番が来て、センターマイクに向かっていく。あの直前。あの直前の、ゾクゾクする感覚は一体なんなんだろう。他に似ているものが、僕は何も思いつけない。特別な時間だった。本当に素晴らしい演芸だと思った。そして、芸人さんはやっぱりカッコいい。売れていても売れていなくても関係ない。かっこいいと思う。そして、「しゃべくり漫才とは何か」の尻尾を少しだけ掴めた気がする。僕の中に少しだけ言葉を持つことができた気がする。

M1挑戦は最初で最後。明日からはキャンプが好きな演劇おじさんに戻ります。